お仕置きは躾けの基本
診療カウンセラーの立場から躾けの原点・お仕置きを、母親と子供を結ぶ最短距離のスキンシップとして考察する。

躾けの原点としてのお仕置き
第二次世界単線が終わって早くも四十一年の年月が過ぎ去ってしまいました。
私たちをとりまく社会環境も大きく変わり、同時に家庭の構成パターンや、子供たちの日常生活も非常な変化を見せています。
登校拒否症、家庭内暴力、自殺、性的問題行動等、かつては考えられなかったような子供たちの諸問題が増加の一途をたどっているのです。
その根源はいったいどこにあるのでしょうか?
私は心理カウンセラーと同時に一人の母親として、もう一度、子供の躾けの原点を考えてみる必要性を強く感じております。
現在では、育児書や児童心理、躾けに関する出版物は、たしかに数多くあります。それに若いお母様型も、よく勉強はされているようです。
ですが、ここ二十年近い間に、子供の躾けに関する専門家といわれる人々の主張には、個性を活かすとか、叱らないとかの躾けが主流を占めてしまい、若いお母様方もそれを鵜呑みにしてしまっているのです。
私はあえて学界の時流に逆らって、私自身の体験と多くの臨床事例から、躾けの原点を述べさせていただくことになりました。
若いお母様方のご参考になれば幸いと存じます。
愛情の厳しさとその発露が大切
厳しい躾けとは、ただ子供たちを強く叱りつけたり、体罰を与えることではありません。
その根本となるものはお母様の大きな愛でなくてはなりません。
体罰とお仕置きの違いはそこにあるのです。
日本語には種々の表現がありますが、私は体罰、折檻の持つ意味と、お母様が子供に与えるおしおきは必ず区別して使っております。
このことは別に詳しく書きますが、参考までに子供の躾けに関する世界各国の格言の中からご紹介してみましょう。
○心で子供の愛し、手で子供を躾ける。(帝政ロシア)
○塩気の無い肉と、お仕置きをされない子供は腐敗する。(スウェーデン)
○子供を愛する親は鞭を与え、愛さない親は甘い菓子を与える。(ギリシア)
○お仕置きの鞭からにじみ出る油は、怠惰の病気の良い薬である。(イギリス)
この他にもまだ多くの格言がありますが、そのほとんどが子供の躾けでの鞭の必要性をとなえています。
面白いことに中国やインドにも同じような格言が残されています。
日本で広く使われている『鉄は熱いうちに打て』もそのひとつです。
鞭という言葉は必ずしも実際にそれを使うことではありませんが、ヨーロッパでは家庭での子供の躾けに使われてきたということは事実です。
日本では、子供のお仕置きに鞭が使われることは一般的でありません。
その代わり、私の少女時代には竹の物差しで子供のお尻を叩くお母様がたくさんおられました。
お恥ずかしいことですが、私もお尻叩きをされたひとりです…。
ところで、先に述べました体罰や折檻とおしおきの相違ですが、前者はただ単に子供の身体に痛みを与える懲罰で、ときには親や教師の一方的な感情に支配されます。
お母様のお仕置きは懲罰ではなく、愛の懲らしめとスキンシップが目的ですから、そこには多少ユーモラスな面も必要とされます。
わざわざ子供のスカートをたくし上げたり、お下穿きのズロースやショーツ等を下げるのも、その中にお母様の感情をやわらげる効果を生むためです。
お仕置きの部位として、世界中でお尻が選ばれているのも、安全な場所であると同時に、ユーモラスな感じが持てるからだと思います。
お仕置きは子供の年令に応じながら
育児書や躾けの本の多くは、お仕置き(体罰という言葉を使っています)を与えるのは三歳くらいまでにして、以後は言葉で躾けると書かれています。
しかし、私に言わせていただければ、それらはまったくのナンセンスです。
むしろ三歳児まではほんとうの意味でのお仕置きは無意味で、この年令までにはトイレットトレーニング等の身体的躾けが中心になるのです。
人間性を豊かにするための躾けは、お母様の言葉がよく理解できるようになってから初めて開始されるのではないでしょうか?
その手段として、お母様が時には愛のあるお仕置きをなさる必要があるのです。
これは親と子供の位置付け、関係付けを形成するためにとても有効な方法だと思います。
幼児期から思春期まで一貫して躾けられた子供は、家庭内暴力などはぜったいに起こさない、といって良いでしょう。
それは大人(親)と子供の位置付けが明確に確認されているからなのです。
このような意味からも、躾けの上でのお母様がお子さんにお仕置きを与えるときには、愛情はいうまでもありませんが、ご自身の行為にも自信を持たれることが大切です。
もし確固たる自信がないと、躾けに一貫性を欠くことになります。
前の日にはお仕置きされたのに、次の日はお小言だけで済んでしまったというようなことがありますと、お子さんも混乱してしまいます。
お母様が決めたルールは必ず守らなくてはなりません。
それでは次に、日本の家庭で古くから行われてきた子供のお仕置きの方法をいくつかあげて、その年齢別の効果にふれてみましょう。
おとじこめ
これは一番ポピュラーな軽いお仕置きの方法ですが、幼児期までしか怒らしめの効果は期待できません。
昔は田舎のほうで土蔵の中へおとじこめすることが多かったのですが、今では土蔵そのものが少なくなってしまいましたので、多くの場合、押し入れや物置きが使われています。
暗い押入れに、お仕置きとして入れられた経験を持っておられる人は数多いと思います。
かくれんぼのような遊びでは平気で暗い押し入れや物置きにも入れる子供たちが、いざお母様から「おしおきです!」と言われて入れられると大声で泣き出してしまうというのは、心理的なお懲らしめの効果です。
外国では、これと似ている方法でイスに腰をかけさせて壁に向かわせ、一時間から二時間反省させるという方法がありますが、現在の日本の住宅事情を考えますと、やはり少なくならざるを得ないでしょう。
いずれにしましても、おとじこめのお仕置きは五、六歳までの子供に限られます。
おしめだし
子供が約束の帰宅時間に遅れたり、夜間に聞き分けのないような場合によく使われるお仕置きです。
お家の外へ子供を出したり、帰ってきても中から鍵をかけてお家へいれさせない方法です。
現在ではマンションのベランダや屋上などもお仕置きの場所として使われますが、この場合、転落事故には十分に注意する必要があります。
実際に数年前、神奈川県でお仕置きでベランダへ締め出された幼児が転落死亡したというケースがありました。
お家へ入れてもらえず泣きながらゴメンナサイを繰り返している光景を、今でもときどき見ることがあります。少し可哀想な気もしますが、なんとなく微笑ましく感じられるものではあります。
このお仕置きには、おとじこめと違って小学生の子供にも効果は十分にあります。
近所の人たちに、自分がお仕置きされていることを知られてしまう恥ずかしさも感じさせることができるからです。
戦争前にには女の子がお下穿きのズロースやブルマーだけにされて裸で外へしめだされていることも多かったのです。
それも寒い冬の夜に行われるということもありましたので、お仕置きとしては折檻に近い厳しいものと言えましょう。
しかし現在ではおとじこめと同じ、いやむしろ軽いお仕置きの方法と言えます。
もっとも躾けの厳しい家庭では他の方法と組み合わされる場合もあるようです。
お立たせと正座
この方法は家庭よりも小学校などで先生が児童に与える場合が多いのですが、もちろんお母様がお仕置きとして使うこともできます。
その際は、おとじこめと併用して使ったり、しめだしと共に与えることが多いようです。
近所の人に見られながら外に立たされているのは、子供心にも恥ずかしいものですが、お家の中で板の間に正座させられるのもつらいものです。
厳しいお母様は、お正座のお仕置きをなさるときには子供の下半身をお下穿きだけにするようですが、これは足に苦痛を感じさせるためなのでしょう。
また、お立たせのときに水の入ったバケツを両手に持たせるのは、よく小学校で行われたものですが、これは現在でも使われています。
しかしこのお仕置きは、家庭内のお懲らしめとしては、あまり効果はないようです。
おしばり
庭の立ち木とか、縁側の柱に結わえ付けられるお縛りのお仕置きは、私がちいさい頃には数多く行われておりました。
子供をくくりつけるときには、やわらかい布製の細帯が使われました。
ロープとか荒縄等はまったくといって良いほど使われておりません。
おしばりは、屋外へのしめだしと一緒に使われると子供にとっては厳しいお仕置きでしたが、これはさらに後でご紹介するお灸やお尻叩きが組み合わされる場合もありました。
このお仕置きのときには、お母様だけでなくお父様も手を貸されることが多いようでした。
しかし、あまり行き過ぎると折檻になってしまう危険がありますので、躾けのために子供へ与えるお仕置きとしては適当ではないと私は思っております。
お灸とおつねり
昔からお灸をすえるという言葉は、子供に対するお仕置きの代名詞の役目をしておりました。
お祖母様が同居されておられる過程では、よくお灸のお仕置きが見られました。
お線香に火をつけ、もぐさを用意するだけでも、お仕置きの効果は十分に発揮できたものです。
実際には、お母様だけでお灸のお仕置きをすることはとても困難ですから、お祖母様とかお手伝いさんの協力が必要でした。
ときには先に柱へおしばりをしてから、お灸をすえることがありました。
この場合すえる場所は、足の指の間がふつうです。
手にお灸をすえることもありましたが、多くの場合、子供をうつ伏せにし、押さえつけてからお尻を出させる方法で行われました。
大きな女の子がブルマーとズロースを下げられて、お尻へ大きなもぐさを置かれている光景を私は何度か見る機会がありました。
この場合はほとんどは脅しだけで、泣いて謝る子供によく言い聞かせてからお尻叩きに変わったり、指できつくおつねりするお仕置きに変わるのでした。
実際に女の子のお尻へお灸をすえると、大きくなってもお灸の痕が残ります。
どうしてもお灸のお仕置きをなさる必要があるときには、足指の間がよいと思います。
お灸のお仕置きを受ける子供は、ほとんどがお小水をおもらしします。
ですから先にお手洗いへ行かせるか、布オシメか紙オムツを用意する必要があります。
ただ、お灸のお仕置きは子供にとって精神的にも肉体的にもショックがとても大きいものです。
なるべくならば脅しだけにとどめ、別の方法でお仕置きをなさるほうが良いでしょう。
お尻とか、ほほ、足や手をきつくつねるお仕置きの方法もありますが、これは子供の自尊心を傷つけると同時に、陰険な雰囲気をともないますので私はあまりお母様方にお薦めできません。
お浣腸とお注射
私自身の体験や臨床ケースから申しますと、お灸と同じようにお浣腸とお注射を脅しとして使われることは非常に効果的なのです。
昔の家庭には、子供の疫痢という病気の応急手当のために、かならずリスリン(グリセリン)浣腸やイチジク浣腸が用意されておりました。
ですから今の子供たちと比べると、子供がお母様にお浣腸される機会は非常に多かったのです。
お浣腸もお注射も子供にとってはとても怖いものですし、とくにお浣腸は羞恥も強く感じるものです。
だから、おいたをした子供に
「そんなに悪い子にはお浣腸しますよ」とか、
「悪い子にはお医者さんで大きなお注射をしてもらいますよ」と、
おどかすお母様がたくさんいらしたのです。
しかし私は少女の頃、母から一度だけでしたが、お仕置きとしてお浣腸をされた経験がありますし、近所の女の子が、やはりお母様から何度もお浣腸のお仕置きをされていたのを記憶しているのです。
私の場合、ちょうど悪いことをして母からお仕置きをいただくときに少しお熱があり、お通じも遠かったために、w足しがいちばん恥ずかしがって嫌っていたいお浣腸をされたのです。
たしか小学校四年生のときでしたが、このときはオシメとかゴムのオシメカバーはあてられませんでした。
その代わりお下穿きのブルマーとズロースはすっかり下げられ、お浣腸が終わると、すぐに平手のお尻叩きを受けたのです。
近所の女の子は、ぎょう虫検査に使うお酢のお浣腸をお仕置きとしてされておりました。
現在では使われませんが、以前の子供のぎょう虫除去に食酢を十倍ぐらいに薄めて一週間ほど毎晩、お浣腸する方法が一般的でした。
この食酢浣腸をを注腸されると、お腹の中で焼け付くような痛さを感じたものです。
ふつうのリスリン浣腸ならおとなしくされる子供も、お医者様やお母様からお酢のお浣腸をされると、すぐに泣き出してしまうのでした。
それを治療として、一週間から十日くらいは毎晩されるのですから、このお浣腸はお仕置きとしての効果も十分だったと思っております。
その上、食酢のお浣腸は原則的に寝る前にすると翌朝までお通じはさせませんので、たいていのお母様はズロースの下に布オシメをあてたり、中にはゴム製のオシメカバーを穿かせる方もいたのです。
しかし実際の問題として、お母様がお子さんへのお仕置きとして、お浣腸をされるのはできるだけ避けたほうが良いと思います。
とくにグリセリン浣腸を必要以上に使われるのは身体的にも悪い影響があります。
ですが、お母様と子供さんとのスキンシップを深める意味で、どうしてもお浣腸のお仕置きが必要なときにはふつうの温水でお浣腸してあげましょう。
また、厳しいお懲らしめを必要とされる場合でしたら、前に述べました食酢のお浣腸が効果的です。
しかしお酢を十倍以上に薄めることだけはお忘れにならないでください。
このお仕置きは小学校高学年、あるいは初潮直後の女の子にはとくに効き目があるでしょう。
ただ、オシメやオシメカバーの使用は別な意味で問題を残す危険がありますから、お仕置きとして使わないほうが良いでしょう。
いずれにしましても、お仕置きの方法としてお浣腸を使うのは、お母様の十分な心づかいが必要なことをお忘れになりませんように。
お尻叩き(スパンキング)
お尻叩きは、子供へのお仕置きとして世界中で行われているもっとも代表的なものです。
おしおきという言葉を聞いただけで、お尻叩きを連想される方はたくさんいらっしゃることと思います。
私の思い出の中でも、お仕置きといえば母からいただいた「お尻叩き」がまず中心になってしまいます。
とくに女学生になってから、お下穿きのズロースを下げられ、女中さんに見られている前で母から受けた最後のお尻叩きのお仕置きは、今思い返しても顔が赤くなるほどです。
ですが不思議なことに、お尻叩きのお仕置きの記憶はけっして不快なものではなく、むしろ母への追憶としてほのぼのとした感じを与えてくれるのです。
この気持こそ、最初にお話した体罰や折檻とはまったく違った「愛のお仕置き」が与えてくれたものだと信じています。
お尻叩きのお仕置きが、子供にとっていちばん効果があり、そして良き幼時の思い出として心に刻まれることと信じて、お母様は愛の鞭をふるわれるべきでしょう。
これまで述べてまいりました数々のお仕置きの方法と、このお尻叩きを組み合わされるのも良いでしょうし、お尻叩きの姿勢も、種々の工夫をされて、そのご家庭に適したお仕置きを研究してみられてはいかがでしょう。
基本として守らなくてはいけないのは、子供のお尻叩きの場合は、かならずお尻をじかに叩くことです。
男の子ならズボンを脱がせてパンツを下げ、女の子はスカートやスリップをたくし上げてお下穿き(ショーツ、パンティー、ズロース、ブルマー等)を十分に下げてお尻を出させることです。
スカートの上からとか、お下穿きの上からのお尻叩きでは、お仕置きの効果もありませんし、お母様とお子さんとのスキンシップも得られないからです。
お尻叩きのお仕置きは、お母様の愛情、子供の羞恥心、甘え、痛さ、お懲らしめ、などから成り立っています。
単なる懲罰だけで終わってしまってはいけません。
イギリスやフランス、ソビエト等では、現在でも子供のお仕置き用鞭が使われていますし、アメリカの家庭でも革鞭や板製の鞭(パドル)でお尻叩きがおこわなれています。
一部の出版物では、ヨーロッパやアメリカの子供の躾けで、お尻打ちが少なくなっていると伝えられています。
しかし私の聞いている限りでは、まだまだ子供のお仕置きはお尻叩きが主流のようです。
むしろ最近では逆にお仕置き(スパンキング)の効用が再評価され、若いお母様方も子供のお尻叩きを増やされていると、キリスト教関係の方がおっしゃっておりました。
日本の若いお母様方は、子供のお尻をお仕置きとして叩かれのに迷いを持っておられるようですが、それが非行や家庭内暴力等につながっていることに気づいていただく必要があります。
お母様方が幼時から少女期に、そうしたお仕置きを経験されていないことも原因でしょうが、ほんとうに子供さんを愛されているならば、自信をもってお尻を叩いてあげてください。
〈補足資料:お仕置きケーススタディ〉
女子中学生の夜尿症に対する「お仕置き」療法
A子さんがお母様に連れられて初めて私の相談室へ来られたのは、中学校一年生の一学期が始まって間もない頃でした。
A子さんは東京都内の短大まである私立学園の中等部の生徒で、お父様は会社員、お母様は自宅で書道の教室を開かれていました。
子供さんは長女のA子さんと、小学校四年生のB夫君の二人です。
お母様といっしょに面接したA子さんは瞳の大きい、かわいらしい少女でした。
書道の先生をされているお母様の躾けが行き届いているのか、お行儀もよく、私の質問にもハキハキ答えてくれました。
ふつう、心理相談室を訪れる方は、子供さんでも大人の方でも、どことなく表情に暗さがあるのですが、このA子さんの場合には不思議にそれがありませんでした。
お母様の年令は三十五歳、お父様は三十八歳でした。
お父様は四年生の大学卒、お母様は短大(A子さんと同じ学校)卒で、なかなか知性的な人です。
A子さんの相談内容は、オネショの悩みでした。
A子さんとのインテーク面接(第一回目の面接で『初診』の意味)の前に、まずお母様からだいたいの様子をお聞きしてみました。
私「オネショにもいろいろな形がありますが、A子さんの場合はどの程度ですか?」
母「現在は一週間に四日ほどでございます」
私「おふとんまで濡れてしまうのですか? それとも、お下穿きやパジャマ程度ですか?」
母「五回に一回くらいはベッドのシーツまで汚してしまうのですが、それ以外は下着が濡れるくらいです」
私「オネショが心配になりだしたのは、A子さんが何歳くらいからでしょうか? 幼児期のこともお話してくださいますか?」
母「オムツが取れたのは割と早かったと思います。一歳半頃から、ビニールのトレーニングパンツで昼間は過ごしておりました。お通じも、その頃からベビー用のオマルでしておりました」
私「トイレット・トレーニングは上手にされたようですね」
母「幼稚園の年少クラスの頃、下の子供が一番手がかかる時期でしたが、その頃からA子のオネショが始まったみたいです。その頃は、まだ私もあまり気にならなかったんです。けれども、小学校へ入っても良くなりませんし、卒業する頃になってもいっこうに治る様子がありませんから、心配になって…。なにせ六年生のときの修学旅行も休ませたくらいですから」
私「お医者様には診ていただきましたか?}
母「ハイ、小児科の先生にも泌尿器科の先生にも診察していただきましたが、身体には別に異常がないとのことで…。一時期、小児科の先生にいただいた軽い精神安定剤を飲ませていたのですが、かえってひどいオネショをしてしまったのです」
お母様との対話は長く続くのですが、ここでA子さんとの会話のポイントをご紹介してみましょう。
私「A子さんは怖い夢は見ますか?」
A子「ときどき見ます。でも楽しい夢も…」
私「A子さんが今、いちばん心配なことはなにかしら?」
A子「二年生になると修学旅行があります…。そのときまでにオネショが治らないのではないかということです」
私「オネショに気がつくのは夜中、それとも朝になってから?」
A子「朝早くです。パンツが濡れているので気持ち悪くて」
私「オネショをしてお母様から叱られたことはある? たとえばお尻を叩かれるとか」
A子「小さい頃はあったかもしれないけど、今は叱られません」
私「修学旅行までにオネショを治すために、これからはオネショのとき、お母様からお尻をお仕置きしていただきましょうか?」
A子「オシオキ…。ええ、治るのなら」
私「お尻を叩かれるのは、恥ずかしくないですか?」
A子「B夫に見られないのなら…でも…」
どうやらA子さんの夜尿には泌尿器的な問題はなく、クローニック(慢性)な夜尿症とも違うようでした。
いちばんのポイントはオネショの時間が朝方である点。
これは子供の夜尿症でも、治りやすいパターンです。
A子さんの場合は、弟のB夫君の誕生とも関係づけられます。
けれどもそれは最初の頃のことで、現在はむしろ心理的な不安要因のほうが強いと思われました。
そこで私はお母様にある提案をしました。
A子さんがオネショをしたとき、それもベッドまで汚してしまったときに限って、お母様にA子さんのお尻を平手でお仕置きしていただくことにしたのです。
ここでもう一度、会話を再現してみましょう。
母「先生、オネショには叱ることがいちばんの禁物だと聞いておりますが…」
私「お仕置きといっても、これはオネショを懲らしめるための体罰ではないのです。つまり一種の刻印づけでして、A子さんがお母様の手でお尻を叩かれるときに、その痛さよりもむしろ、オネショの印象が深められるということです」
母「お尻を叩くとき、とくに注意することはありますか?」
私「お下穿きを下げて、お母様がしっかりとおひざの上に抱いてあげてください」
お母様が、「痛くないおしおき」の意味を理解できるまで私との会話はつづけられました。
次に、A子さんには夢日記とオネショ記録の宿題を出したのです。
もちろん、お母様から何回お尻を叩かれたかも書いてもらいました。
それから一年間、二週間に一度ずつA子さんとお母様の面接がつづけられましたが、最初の一ヶ月でオネショの回数は半減したのです。
ただ二、三ヶ月たっても、ベッドまで汚すオネショは何回か残り、そしてその回数だけA子ちゃんは、「痛くないおしおき」をお母様からいただいたのでした。
そして昨年の十月、二年生になったA子さんは、元気に修学旅行から帰ってきました。
修学旅行の夜、A子さんのパンティは一度も濡れなかったのです。