婚約者がいたのに強姦された。
濡らしてしまった肉体を笑われた。
あれから私は堕ちていった。

*ここに掲載される文章は、強姦によって人生をめちゃくちゃにしてしまったひとりの女性の告白です。彼女はその忌まわしい出来事がきっかけとなり、マゾヒストへと転落しました。自分で自分を傷つけることで、過去の記憶も小さなひとつの傷にしたかったのです。実はかつて、彼女はYouTubeにこの想い出をアップロードしたのですが、「公序良俗に反する」という理由で削除されてしまいました。
以下、固有名詞等プライバシーに関わる部分以外は原文を掲載いたします。
駅で拉致されて見知らぬ家へ連れて行かれた。
ほんの数年前まで、わたしは自分のことをノーマルな女性であると思っていました。
しかしある方から指摘されて、自分が性的な感覚において屈折した部分があることに気づきました。
辱めを受けると、異様に興奮してしまうんです。
命令されて体を開かされると、ふれられていなくても全身を電流がかけぬけて、心で拒否しようとしても強引にエクスタシーを感じてしまうんです。
そのことに気づいたいま、改めてこれまでの人生を振り返ってみると、わたしにはけっして忘れることのできないひとつの事件があります。
長い間、大したことがないと思っていたこと。
なんでもないこと、誰でも経験のあることだと、ずっと思い込もうとしてきたこと。
わたしはある性犯罪の被害者です。
レイプです。
それは、大学3年生の終わりのことでした。
当時、わたしは民間の室内楽グループにバイオリン奏者として所属していました。
事件のあった夜、わたしは仲間たちといっしょに東京都内の阿佐ヶ谷駅近くにあった楽団のリーダーの家に泊まることになっていました。
ところがちょっとしたトラブルがあって、深夜の2時頃にわたし一人帰宅することになったのです。
深夜の2時ですからもうとっくに終電も行ってしまっています。
そこで阿佐ヶ谷駅の周りで、タクシー乗り場を探してウロウロしていました。
そのとき突然、見知らぬ男2人に両側から身体をつかまれたと思うと、力ずくで、あっという間に、車の中に引きずり込まれました。
どうして声をあげなかったのか?
助けを呼ばなかったのか?
そんな声が聞こえてきそうですが、どうかおっしゃらないでください。
わたし自身、それからえんえん何度も何度もどうしてあのとき声をあげられなかったのかと後悔をしています。
もし声をあげることができたら……これはわたしが死ぬまで後悔することのひとつです。
私は助手席側に押し込められました。
運転席に乗った男は体格ががっしりしていました。
話し方は乱暴というわけではないのですが、ちょっと職人さん風のスゴミのような雰囲気がありました。
もう一人の男は後部座席に乗りました。
その男はヒョロっとした背の高い男でした。
二人の中では運転席に乗った男の方が目上だったようで、もう一人に対して命令口調で話していました。
わたしは幾度か恐怖のために大声を出しましたが、そのたびに、
「おとなしくしろ。さもないとどうなるかわかってるのか……」
といったような言葉で脅されました。
脅されることによって益々恐怖感が高まり、声も出なくなりました。
わたしは「殺されるのではないか」という恐怖でいっぱいでした。
それは生まれて初めて感じたとてつもない恐怖で身体の震えが止まりませんでした。
震えながらわたしは、バイオリン・ケースをギューっと強く抱きしめていました。
男たち2人の会話の内容は、次第に口論になってゆきました。
はじめは2人でわたしを連れてゆく予定だったようなのですが、途中から後部座席の男が自分一人でわたしを連れて帰りたいと言い始めたためです。
口論の末、運転していた方の目上らしき体格の良い男が勝って、後部座席の男は林のような真っ暗なさびしいところで車から降ろされました。
車の中には、二人だけになりました。
わたしは恐る恐る声を出して、
「どうして、こんな何も無いところで、お友達を降ろしたんですか?」
と、運転席の男に質問しました。
すると男は、
「それはあいつが、お前をと一人で連れて帰りたいって言い始めたからだ」
と言いました。
車がどちらに向かって走っていたのか、どのくらいの時間車に乗っていたのか、まったくわかりませんでした。
輪姦されるのとオレひとりとどちらか選べ
車が止まり運転席の男が先に下りると、わたしのいた助手席側のドアが開かれて、わたしは腕をつかまれて車から引きずり降ろされました。
周囲一体が畑でした。
その畑の中に平屋の一軒家があり、そこが男の家でした。
腕をガッチリつかまれて、無理やりその男の家に連れ込まれました。
入ってすぐの正面の部屋に投げ出すように押されて、わたしは畳に倒れました。
家具の少ない部屋でした。
8畳くらいあるような、なんだか広く見えました。
布団が一枚敷いてあり、白い無地のシーツがむき出しになっていました。
部屋の右奥にはトイレがありました。
わたしは幾度かトイレに行く許可をもらって、行かせてもらいました。
部屋の左奥には、小さな別の部屋がありました。
わたしのいた広い部屋との間を閉ざす物はありませんでした。
男は、その小さな部屋にいて、すぐにはわたしに襲いかかってきませんでした。
彼はわたしの方に目もくれず、ひとりで自分の仕事机に向かって何やら真剣にやっていました。
そんな彼の後ろ姿を見て、わたしは数回逃げ出そうとしました。
しかしトイレと玄関とは逆方向なので、玄関に向かおうとすると見つかってしまいました。
そして彼がこう言いました。
「お前。逃げられると思ってるのか? もしも逃げ出したら、すぐに仲間を5人呼ぶ。5人でお前を輪姦してやる。5人相手にするのとオレひとりとどっちがいいんだ? イヤならじっとしてろ」
男のこの脅し文句は、おそらく彼が想像した以上にわたしを震え上がらせたと思います。
なぜなら、わたしはかなりオクテの女性でしたので、複数の相手と性行為をするなんて、そんなやり方が世の中に存在するなどということを想像してみたこともなかったのです。
わたしはもう、あまりに怖くて、逃げ出すことを断念するしかなくなりました。
1回呼吸をするたびに、その音が部屋中に響き渡っているような気がしました。
しばらくしてわたしは、畳に頭をついて、
「わたしの身体は、あなたの心行くまで自由に使ってくださって構いません。けれどもどうか、楽器だけは、1本も指を触れないでください。このとおり、お願いします」
と彼に懇願しました。
彼はすんなり承諾してくれました。楽器になど、興味がなかっただけでしょう。でもわたしにとっては、命と同じに大切なものでした。実際、その日にわたしが持っていたのは、200万円の値打ちのある楽器でした。
そんな懇願をわたしが彼にしたのはなぜかというと、たしかに、高価な物なので、日頃から大切にしていたのですが、当時わたしは、自分の命よりも楽器の方が大切なものだと、本気で思っていたのです。小学校5年生のときに買ってもらった楽器ですが、そのときからずっと、父から、「お前よりも楽器の方が大事だ」と言われて、自分でもそう信じていました。
今にして思うと、笑い話です。
笑えないけど。
嫌なのに濡れてしまった私の肉体
ここから先、性的描写が出て来ます。
でも例え裁判所で話すとしてもわたしは同じことを話します。
もしも不快だと思われる方は、どうぞこの先を聞かないでください。
男はおもむろに立ち上がりニヤリともせず、怖い目でわたしを見据えて近づいてきました。
そしてわたしを布団に投げつけるように倒しました。
スカートをまくり上げられ、ストッキングとパンティをいっきに脱がせれました。
ブラウスとブラジャーは乳首の見える高さまで乱暴に上げられました。
下半身をあらわにさせられ、脚を開かせ、彼はわたしを辱め始めました。
男は指でわたしの女性器をまさぐりながら、目はわたしの顔をじっと見続け、そしてこう言います。
「どうだ、イヤだろう。イヤだよなあ」
「はい。イヤです」
「そうだよなあ。イヤだよなあ」
「はい。イヤです」
わたしは顔をしかめて、彼をにらみ返しながら答えました。
このやりとりが、幾度か繰り返されました。そして突然、男がこう言いました。
「でも嫌なのに……濡れるのかい?」
そう言って、上下に指を滑らせてみせました。
認めたくなかったけど、その滑る感覚から自分が濡れているのがわかりました。
そして出したくなくても指を動かされるたびに、わたしの口からうめき声が漏れました。
わたしはいちじるしく濡れてしまっていました。
なぜなのかわかりませんでした。
怖いだけなんです。
気持ちがいいなんて一切そんな感覚はないんです。
羞恥心を煽られ自己嫌悪で一杯になりながらも、濡れてゆくのです。
わたしはイヤなのです!
イヤでイヤでたまらないのに、どうしてもコントロールできないのです。
わたしは見知らぬ男と性行為などしたくありませんでした。
わたしには当時付き合っている男性がいました。
彼はわたしが処女を捧げた男性でした。
好きだったのか、今となっては当時の記憶が思い出せません。
でも当時は彼と結婚をするんだと、ぼんやり考えていたことは確かでした。
もちろん彼はたったひとりの男性で、他の誰とも関係を持ったことはありませんでした。
誰に言われたわけでもなかったですが、貞操を守るのがあたりまえのことだと思っていました。
それなのに身体が言うことをきかず、目の前の見知らぬ男の意のままに反応させられてしまうのです。悲しみが満ちてゆきました。
わたしが濡れたのを見て、男は目的を達成しにきました。
男性器をわたしの体内に挿入してきたのです。
「嫌なら絶対に感じている顔はするな」
「嫌なら声を上げるな」
男性器を出し入れされるたびに言われました。
わたしは強く歯を食いしばって、悲しみに耐えました。
彼が動くたびにわたしが声を上げるのは痛みのためです。
しかしその痛みよりも大きな悲しみに、わたしは耐えていました。
自分の身体中がしかめっ面をしているような気がしました。
気が遠くなりそうな性行為がやっと終わりました。
わたしはしばらくの間、まるで馬鹿になってしまったかのように、言葉を発することも、男が言った言葉を理解することもできずにボーッとしていました。
もちろんイカされたりするはずはありません。
わたしがボーッとしていたのは、嫌悪感なのか羞恥心なのか悲しみなのか、自分でもまったく理解の及ばない、完全な混乱状態に陥っていたことと、それと、自分の許容範囲を越えてしまった激しいショックのためでした。